デュオ夢乃 ハワイ大学にて

4月3日から10日の間、デュオ夢乃として、箏・三味線奏者の木村伶香能とともにハワイ大学に招待されました。リサイタルやワークショップなどと通じて、作曲科の先生方や生徒たちと交流する機会を得て、とても充実した1週間となりました。今回の旅では、穏やかなハワイの風土で心身ともにリフレッシュしましたが、やはり地元の皆さまの温かさが一番心に沁みました。

撮影:トーマス・オズボーン

今回のレジデンシ―では、ふたつのリサイタルが企画され、最初のコンサートは大学の先生方による作品に焦点を当てました。ドナルド・ウォーマック氏の A Glinting Edge of Skyトーマス・オズボーン氏の Circles of Light (尺八奏者のクリストファー遙盟氏との三重奏)、そして伊藤琢磨氏の But Beautiful (デュオ委嘱作品・世界初演)を演奏しました。また、それぞれのソロ作品、中能島欣一の「三つの断章」と石黒晶氏の「弦歌三章」にもチャレンジ、大学公演ならでは、密度の濃いコンサートだったのではないでしょうか。先生方による作品は、それぞれの個性が感じられる素晴らしいものでしたが、3曲ともに箏とチェロの音色を魅力的に組み合わせ、どこか淡く儚い世界観が表現されていたのが印象的でした。

二つ目のリサイタルでは、5人の作曲科の生徒たちによる作品を初演しました。ジェームズ・フィナモールさんの「平等院」、トーマス・ゴデーキさんの Turtle and Crane、タイラー・オノさんの The Heart’s Uncertainty、ジェヒョン・リンさんの Buzzy, Busy…, Switchy!アンドリュー・フィルソンさんの From the Mist, I Emerge の5作品でした。日本の楽器のために作曲するのは皆初挑戦と聞いていましたが、それぞれの意気込みが伝わる力作ぞろいで、その情熱に私たちも感激しました。

撮影:トーマス・オズボーン

このふたつのリサイタルを挟んで、生徒たちとのリサイタルやワークショップがあり、それぞれの作品を作曲者とともに深く掘り下げていく作業を楽しみました。もちろん演奏家としての意見を、若い作曲家に伝える貴重な機会でもありましたが、私たちも音楽をつくるうえでの基本的なアプローチの様々を考えさせられ、多くのことを学びました。日本と西洋の楽器のための作品を書いたことにより、学生の皆さんがこれからどのような音楽的成長を遂げて、どのように羽ばたいていくのか、私たちも楽しみに見守っていきたいです。

(左→右) トーマス・オズボーン氏、ドナルド・ウォーマック氏、トーマス・ゴデーキさん、アンドリュー・フィルソンさん、私、木村伶香能、ジェームズ・フィナモールさん、ジェヒョン・リンさん、伊藤琢磨氏

最後に、私たちデュオをハワイ大学に招待して下さった、ドナルド・ウォーマック氏、トーマス・オズボーン氏、伊藤琢磨氏に深く感謝申し上げます。レジデンシ―を通じて出会った皆さまとの充実した時間は、これからも私たちの励みになるでしょう。世界も、音楽もほんの僅かながら前進している、そんな希望を感じさせられた一週間でした。

2018年を迎えて

明けましておめでとうございます。

2017年は特に大きな変化はありませんでしたが、いくつかの小さく、確かなステップを前へ進むことのできた1年かもしれません。9月にコンテンポラリー作品を精力的に演奏することで知られる、アルバニー交響楽団のチェロセクションに入団し、デュオ夢乃では4月に、全米桜祭りにフィーチャーされ、ジョンFケネディーセンターでリサイタルを開催いたしました。

昨年1年を振り返ると、アメリカでも日本でも、人びとが政治的・社会的に分断されていた状況が、さらに悪化の一途をたどったように思います。そんな中、私は2月に聴くことのできたジョルディ・サヴァール氏率いる、エスペリオンXXIのコンサートで勇気づけられ、残りの1年をポジティブに乗り切ることができたように感じられます。このベネチア共和国の音楽を特集した公演では、西洋音楽、中東音楽の演奏家や歌手が30-40人ほど出演し、ベネチアの様々な文化的背景を踏まえつつ、豊かな音楽が花開いた歴史がスリリングにひもとかれました。

アンコールでは出演者一同により、ベートヴェン交響曲5番のフィナーレが高らかに演奏され、拍手の鳴りやまぬ中、観客に向かいサヴァール氏は「私は世界市民です」と語りかけました。このとき、観客の多くは1月下旬にアメリカで発令されたばかりのイスラム教7か国の入国禁止令が頭をよぎったはずです。サヴァール氏は、「今日のステージにはイラク人、シリア人のほか、多くの国からの演奏家が並んでいます。今は私たちにとって辛い時代です。しかし、emotion(感情)、memory(記憶)、sensitivity(繊細さ)を失くしてはいけません。私たちはもっと繊細であるべきです。」と続け、満場の喝采を浴びました。

昨年を通じ、私は何度もこの言葉を思い出し、この三つの要素は素晴らしい音楽には不可欠であると確信しました。そしてこれはそのまま私たちの生き方にも関わる大切なことであると教えられ、感動を新たにしました。あまりにも自明のことで忘れられがちなことかもしれませんが、2018年もこの三つの言葉を胸に音楽を奏で、世界を少しでもより良い場所にすることができれば、と願う新年です。

皆様もemotion、memory、sensitivityに彩られた素敵な1年を過ごすことができますように。

2017年の近況

2017年の世界情勢は、もう既に目まぐるしく変化していますが、何はともあれ、今年に入ってからの私の近況をお伝えします。

1月8日に木村伶香能の三味線リサイタルにて、佐藤容子さんの「Not a Single Cloud Exists」を弾きました。木村は三味線コンチェルトを2曲も演奏するなど、自身の限界に挑戦した感がありました。そういった緊張感、演奏家の誠実さの伝わるコンサートに参加することができ、誇らしく思います。

同じ月には、ナショナルオペラセンター・アメリカ主催による、新作オペラの発表会があり、エリック・オクスナーさん指揮のもと、SONOS室内管弦楽団の一員として参加させていただきました。抜粋ではありましたが、5つの新しい作品が発表され、オペラの世界の活力に触れた思いでした。チェロセクションのメンバーとの交流も楽しかった!

デュオ夢乃としては、1月22日にコネチカット州フェアフィールドの日本協会の新年会で演奏をいたしました。一昨年に続き、2度目の出演でしたが、メンバーの皆様の歓迎を受け、和やかで心温まる会となりました。

Photo: Marco Borggreve

カーネギーホールにて聴いたジャン=ギアン・ケラス(チェロ)とアレクサンダー・メルニコフ(ピアノ)のリサイタルが素晴らしかったです。ベートーベンのチェロソナタ第3番やショパンのチェロソナタなどを演奏しましたが、チェロの音色の多彩さに圧倒されました。表現の幅の拡がりという点においては、現役チェリストでも、随一ではないかと思います。演奏家はもっと果敢に冒険をしなければならない、と勇気づけられる思いでした。

『沈黙』マーティン・スコセッシ監督

長すぎるといった不満もなくはないものの、俳優たちの素晴らしさ、丹念に構築されたイメージと音響、そして深い思索に満ちた内容に感銘を受けました。ハリウッドの監督が日本を舞台にした映画を撮ると、気負いすぎたり(『ラストサムライ』)、日本人から見るとシュールになったりしますが(『47RONIN』)、スコセッシは趣味がいいというか、かつての日本映画へのリスペクトをはらいつつ、自身のテーマを追求していて、好感を持ちました。

感謝祭2016!

今日はアメリカの感謝祭連休、最後の日でした。木曜日からずっとお休みで、家族で集まったり、ショッピングなどでにぎわう週末でした。

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しばらく前になりますが、ニューヨーク仏教会にて10月16日にデュオ夢乃リサイタルを開催し、無事に終えることができました。コンサートにお越し下さった皆様、ありがとうございました!

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コネチカット州にてデュオで演奏する機会も幾つかあり、紅葉の美しい季節とも重なって、印象に残りました。10月18日にグリニッジ歴史協会、11月7日にリバーサイド小学校、11月19日にエッジヒル・シニア・コミュニティーにて演奏しました。

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オーケストラのお仕事では、11月12日にノースイースタン・ペンシルバニア・フィルハーモニーのチェロセクションで弾かせていただいたコンサートが、特に印象的でした。

ヤナーチェクの『イェヌーファ』

ヤナーチェクの『イェヌーファ』

メトロポリタン歌劇場で『トリスタンとイゾルデ』とヤナーチェクの『イェヌーファ』を観劇する機会もあり、共に感銘を受けましたが、特に後者のあまりの素晴らしさには驚愕。もっとヤナーチェクのオペラを観なければ!

『飢餓海峡』内田吐夢監督

『飢餓海峡』内田吐夢監督

MoMAで開催された内田吐夢特集にて『森と湖のまつり』、『飢餓海峡』、『限りなき前進』の3本を観ることができました。内田監督のフィルモグラフィーの全貌がつかみきれていないので、もっといろいろ観たかったのですが…。

11月8日には、歴史的な大統領選挙もありました。これからどうなるか分かりませんが、前に進むしかないですね。共に助け合って、よりよい世界を作っていきましょう!

デューラーとレンブラントの版画展 ハイド・コレクション

先週末はニューヨーク州のグレンズ・フォールズ・シンフォニーにて演奏させていただきましたが、滞在中にこの素晴らしい展覧会にめぐり合う機会に恵まれました。点と線だけの世界ですが、精密極まりない作品の数々に息を吞みました。デューラーの精緻なタッチにも感銘を受けましたが、レンブラントのうねるような線が描き出す作品が圧倒的で、とても人間技とは思えません。今回初めて存在をしったエギディウス・サドレルの作品も、だまし絵のような遊び心が感じられ、個人的にくすぐられるものがありました。

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デューラー:ネメシス(運命)

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レンブラント:十字架降下

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エギディウス・サドレル:ダイアナとアクタイオン

 

10/16/2016 デュオ夢乃リサイタル ニューヨーク仏教会

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ニューヨーク仏教会のデュオ夢乃リサイタルまで、あと一か月となりました。仏教会で演奏させて頂くのはこれで3度目ですが、私たちの新しいプログラムを弾かせて頂くのをとても楽しみにしています。この度のリサイタルでは、先日ニューヨーク・クラシカルレビューで絶賛された、ダロン・ハーゲン氏の「カンタービレ」、そして佐藤容子氏の”In the Land of Dreams” をNY初演します。

また、私たちのレパートリーのなかでも、とりわけ敬愛する、マーティン・リーガン氏の「月の静寂」とトーマス・オズボーン氏の「九天より落つ」、そして日本を代表するふたりの作曲家、細川俊夫氏と寺嶋陸也氏による、ソロ曲も演奏します。

詳しいコンサート情報はこちらをご覧下さい。

山の音(1954)

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成瀬の女性を見る目は厳しいですが、日本社会に生きる様々な女性たちに寄り添うようにして撮られた作品のように思えました。俳優たちの視線の演技、特に原節子のそれが素晴らしいです。この作品における成瀬は、最終的に俳優たちの顔に全てを賭けていることに感動しました。俳優=人間の存在をどこまで伝えることができるのか、そこに感動の本質があるのかもしれません。

本條秀慈郎三味線リサイタル”neo”  ニューヨーク天理文化センター

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先週お聴きした本條秀慈郎さんの三味線リサイタルがあまりにも素晴らしく、まだその余韻に浸っています。プログラムすべてが三味線の現代音楽でしたが、エリザベス・ブラウンのAfterimageや高橋悠治のKasukaniの静けさの際立つ作品から、藤倉大のneoのワイルドなエネルギー溢れる作品まで、バラエティー豊かな選曲で、楽器の魅力が十二分に発揮されていたのが、とても印象的でした。一柳慧の「臨海域」や鳥飼潮のTROISに至っては、本條さんの演奏が曲と一体化して、現代曲でありながら古典の風格さえ漂わせる演奏でした。